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軽犯罪法と護身用品

軽犯罪法と護身用品

スタンガンや警棒を持っていると銃刀法になりますか???
よくお問い合わせの中でみます。
まず銃刀法に抵触することはありません。

法に抵触する可能性があるとすれば軽犯罪法です。
軽犯罪法の中に次のような一文があります。


正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

つまりこれにスタンガンや警棒や催涙スプレーなどの護身用品が当てはまる場合があるということです。
「携帯していた者」という一文から家内や事務所内、店舗内に防犯用に備えることに関しては何の問題もありませんが、問題があるのは持ち歩く場合です。

ここでもっとも重要になるのは「正当な理由がなくて」という部分です。
正当な理由があれば何の問題もありません。
では何をもって正当な理由となるのでしょうか?「護身用」?これは残念ながら答えが出ません。状況は個人さまざまですので全く同じシチュエーションでも正当な理由と判断してくれるかしてくれないかは担当官による部分がほとんどです。
この問題に関しては10年以上私も頭を悩ませております。

近年、犯罪が凶悪化し自分の身を自分で守ろうとお年寄りから若い女性まで護身意識を持っていただいていますのに、これが気になって護身用品に踏み切れない方がいるもの事実です。

この件に関してはお客様より警察に対するクレームなどとともにいくつかの事例をお聞きしておりますが警察は事件になるまで相手にしてくれないくせに、自分で身を守ろうとした場合に護身具を携帯すれば没収などされる場合もあります。
現に護身用品で助かった方はたくさんいます。
警察は被害にあわないと相手にしてくれない、護身用品を持てば軽犯罪法違反にあたるなどと言ってくる。

残念ながら日本は警察は自己防衛のための護身用品でさえ携帯を快く認めてくれません。
なら、警察がいざというときに守ってくれるかといえばこれも答えはNOです。警察は事件になってからでないと動いてくれません。
でも殺されたり・レイプされたりしてから警察に言ってなんになるのでしょうか?

--------以下参考--------

軽犯罪法1 条2 項の「正当な理由」について(判例タイムズ1296 号141 頁以下)

1.事件の概要
深夜の路上でサイクリング中の被告人が、ズボンの左前ポケット内に催涙スプレー1 本を携帯していたことが、軽犯罪法1 条2 号にいう「人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」に当たり、かつ、「隠して携帯」に当たるかが争われた事例。

2.参照条文(軽犯罪法1 条2 項)
第一条 左の各号の一に該当するものは、これを拘留又は科料に処する。
一(略)
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

3.判決要旨(最高裁第一法廷判決平成21 年3 月26 日)

1. 軽犯罪法1 条2 項にいう「正当な理由」があるとは、同号所定の器具を隠して携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいい、これに該当するか否かは、当該器具の用途や形状・性能、隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係、隠匿携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と隠匿携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきである。

2. 職務上の必要から、軽犯罪法1 条2 項所定の器具に当たる護身用に製造された比較的小型の催涙スプレーを入手した者が、これを健康上の理由で行う深夜路上でのサイクリングに際し、専ら防御用としてズボンのポケット内に入れて携帯したなどの本件事実関係のもとでは、同隠匿携帯は、同号にいう「正当な理由」によるものであったといえる。

4.評釈
軽犯罪法1 条2 項の「正当な理由」の具体的判断については、銃砲刀剣類所持等取締法22 条の「業務その他正当な理由による場合を除いては」と同様に解される。「業務」とは「人が職業その他の社会生活上の地位に基づき、継続的に行う事務または事業」であり、「その他正当な理由」とは、社会通念上、刃物を携帯することが当然に認められるよ
うな場合である(例えば、包丁を購入して持ち帰る場合や登山者が登山用ナイフを携帯する場合)。他方、喧嘩の際の護身用としてナイフを携帯するような場合はこれらに当たらない。とすれば、一般的に催涙スプレーの隠匿携帯に関しては、「正当な理由」にはあたらないといえる。ただこの判決において無罪判決が出たのは、あくまで事実に即した判断であって、催涙スプレーの隠匿携帯が一般的に同条に触れないものではないことに注意すべきである。

5.私見
治安悪化のため、催涙スプレーのような防犯グッズを購入する人が増加しており、一概にこれらの器具の隠匿携帯を違法とするのはやはり妥当ではなく、最高裁が無罪判決を出した点について評価できる。このように考えれば、非力な女性が深夜に暴漢対策として催涙スプレー等を携帯していた場合は、「正当な理由」に当たると思われる。
今後このような事件が増えることが予想されるが、リーディングケースとして「正当な理由」の判断方法を示した
この判決を支持しうるものである。

6.参考文献
・伊藤榮樹『軽犯罪法(三訂版)』[1982]65 頁以下